OK R.R. - Short stories

◆REPAIR GANG

◆RAILBUS


REPAIR GANG

「ハマーの奴、どうもいかんな」
「あいつは前からガタがきてるぜ、今度はなんだい? スティーブ」
「いやね、汽笛のどこかにヒビでも入ったんじゃないかってね。たいしたこたない」
「なんだそんなことかい、鳴らないならともかくほっとけよ」
「びょぉ〜ってもの悲しい鳴き声を聞いてるとどうも調子が出ねぇんだよ」
「そんなもんかね、オレはジョー・ダンカーの方が悲しげに聞こえるぜ」
「あいつはしょうがない、どっかの鉱山からかっぱらって来た汽笛だからな。ま、元々ドンキー上がりだからまともな部品なんてありゃしないけどね」
「そりゃみんな同じさ、ここにゃまともな部品なんてありゃしないぜ」
「まったくだ」

OKリバーの中流、Keating Summit の修理工場、通称 Wild-goose。機関車1両がやっと入る検車庫と僅かな工具、腕だけは一流と称する9人の職人が山でボロボロになった機関車や貨車を修理し、時には貨車や客車をでっち上げていた。 口の悪いカウボーイあがりの山男が修理工場の仕事振りを称してこう名付けた・・・「wild-goose chase、まったくこいつらの仕事ときたら治る見込みがまったくねぇぜ。9人まとめて Nine Geese だね」・・・ということらしい。しかしながら、彼らの仕事はそう捨てたものではない。彼らのために弁解しておくと、けちなオーナーがまったく補充部品を買わない、さらには機関車はどれも中古のポンコツを買ってくるのである。彼らは、時には2台のポンコツ機関車から1台のちょっと程度の良い機関車をでっちあげ、また逆に1台を2台の小型機関車に改造?してみたり、社長のフォードをレールバスにしてしまったり、と、なかなか面白いことをしてくれるのである。彼ら、自称 REPAIR GANG は、これも自称だが不可能を可能にする男達なのである(言い過ぎだね)。


M.Reusser Collectionより"REPAIR GANG"

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RAILBUS

「ウィルソン君、今年もご苦労だったな。」
OKリバー鉄道の技師長ハワード ウィルソンは、ささやかなクリスマスパーティの合間に社長室に呼ばれていた。
彼にとってこの一年は、新たに導入したガソリンロコにかかりきりの目の回るような忙しさが続いた年だった。幸い、ガソリンロコは積み出し軌道の最深部で、取り回しの良さから重宝がられ、積み出し線の軌道敷設の簡素化など今後に期待が持てる結果を得ていた。

「・・・ところで、君を呼んだのは他でもない。ガスロコの成功を機に一つ考えていたことを実現したいと思って君の意見を聞きたかったのだよ。」
「・・・」
「実はね、先月カナリバーで起きた運材列車の転覆事故は知っていると思うが、それに関して州から通達が出たのだ。」
「トレッスルからゴンドラが転落した話しですね。」
「うむ、最近はうちの路線でも奥地のキャンプまで商人や銀行家が入り込んでいるようだが、カナリバーで落ちたゴンドラにもそういった人間が数人混じっていたようだ。」
「カナリバーでは便乗の連中は材木と同じだなんて言ってましたね。」
「ああ、そうだ。わたしも基本的には同じ考えなのだがね、通達ではそういった連中はきちっと管理した上で安全に運べと宣っている。聞いた話では州の高官の倅が商用で乗っていたらしいんだな。」
「そうですか、本線ならまだしも規格の低い運材線ではややこしい話しですね。そのうえ連中からは金もほとんど取っていないし。」
「そうなんだ。どうせ荷物と一緒にゴンドラの片隅に載せてやっているだけだからいいようなものなのだが、お上が本気で通達を出したのであれば対応しておかないと命取りになる可能性がある。そこで、君には金の取れる簡単な客車を作って欲しいと思ったのだよ。」
「ガスロコがヒントということですね。」
「正解だ。ガスロコは上部線に増備するだけで精一杯だから、この間KEATINGの連中が作った巡回車を大きくしたような車で荷物と客を乗せられるようなものを考えてくれないか?」
「解りました。効率から考えても少し馬力のあるガスロコが必要になる時期も近いことですし、すこし研究してみましょう。」
「いやいや、研究じゃ遅すぎるんだ。とりあえず来年の積み出し時期までにはなんとかしてくれないとまずいのでね。急いでくれ給え。」

頭の痛い話しであった。
ガスロコでも運材車を数両牽引するのがせいぜいで、人や荷物を載せて長い勾配を行き来する車輌となるともっと力の強いエンジンが必要であった。数人を載せる程度の巡回車とは大きな違いなのだ。が、ハワードにとっては、老朽化したダンケルク社の機関車も数年のうちに迫った更新の必要から内燃機関を積んだ運材機関車の研究を始めたところでもあり、この機会に取り組むにはちょうどよい素材でもあったのだ。

こうして、ハワードは内燃機関に本格的に取り組みを開始することになる。
しかしながら、ハワードにとってOKリバーにディーゼルエンジンの咆哮がこだまする時代を知らずに終わるとは、この時点でハワードにも全く予想ができなかった。

<つづく>

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※この物語は史実や実際の鉄道には基づいておりません。また、時代設定もそれぞれのエピソードでズレることがあります。

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